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消える日


今日、僕は由貴に会うために舞子駅から電車に乗った。
よく晴れた午後、サービス業の僕は平日に休みが貰えるし、僕の彼女である由貴もまた、デパートの販売員だから同じような曜日に休めることが多いのだ。
由貴とは快速電車の2両目の車両で落ち合うことになっていた。僕は舞子駅から、彼女は新長田駅から普通電車に乗り、更に兵庫駅でこの電車に乗ってくるはずで、あとは大阪ででも散歩をしようというものだった。
電車に乗る前、ホームの上空を戦闘機のような飛行機が飛んでいくのが見えた。

午後の快速電車は空いていた。
8両編成のニ番めの車両の一角に空いているボックスを見つけて、僕はそこに座った。電車が走り出すと車窓からの海がキラキラしてとてもきれいだ。
海の上をまたジェット機が東へ向かって飛んでいった。
須磨海岸の、海が車窓いっぱいに広がる。今日はお天気も良く、電車も空いているからリラックスが出来る・・そう感じていたとき、いきなり東の空がオレンジに染まった。
電車はちょうど、大阪や堺の町が見渡せるところを走っていた。
大阪の町のほうに大きなキノコ雲が上がった。
電車は停車した。車窓には海が広がるけれど、空の色が少し変わり始めてきていた。
「何が、起こったんだ?」他の乗客の声がする。
反対側の車窓を見ると、クルマは何時ものように流れている。けれども国道の向こうの山陽電車の線路上でも電車が停車していた。
空はにわかに掻き曇り、海にも波が立ってきた。電車の窓は開かないから、外の様子はガラス越しに見えることしか分からない。空調も止まってしまったらしく、車内はやけに静かになってしまった。
雲の中でも雷のような光るものが時折見える。
「あれは何だ!」
誰かが叫んだ。海が盛り上がってこちらへ迫ってくる。
津波!そう感じた次の瞬間、電車は波に呑まれた。車体が大きく揺れた。空調やドアのところから容赦なく水が飛び込んでくる。
僕はとっさに電車の壁に身体をくっつけた。車体が横転する。僕は車体から剥がされるように落ち、反対側の座席のほうへたたきつけられた。そこにいた、誰かの上に乗ってしまった。
海の水がシャワーのように入り込む。

気がつくと、水は引いていた。
僕の下には人が居た。
「苦しい・・どいてくれ・・」男だった。
僕はゆっくりと体の異常がないかを確かめながら、立ち上がった。男もゆっくりと立ち上がってきた。
「津波ですか?」
僕がそう言うと、「空が変や・・」男が答えた。この電車は完全に水没はしなかった。あちらこちらで乗り合わせたほかの乗客たちが立ち上がってきた。電車の部品やガラスの破片でけがをした人も居るようだった。
外に出なければ成らない。窓が頭の上にある。
空は真っ黒な雲に覆われているようだった。電車の座席を踏み段にして、先ほどの男がドアを触ろうとしている。
けれども、ドアには手が届かない。横転した車体では出入り口には足を載せるものが何もないのだ。
「駄目か・・」男はつぶやいて車内を見渡した。
僕も車内を見渡した。ふと、車両の端から光が漏れていることに気がついた。
隣の車両との連結面にある幌の部分だった。いくつかの座席の背もたれや肘掛を足がかりに、そこへ近づいてみた。ちょうど、連結面にある扉は下のほうに引っ込んだままになって、幌が破れ、そこから出られそうだった。
「ここならいけそうですよ・・」
僕は男や他の乗客に聞こえるように言った。
何とか幌の破れ目から外に出ることが出来た。
国道ではクルマが軒並み横転していた。仰向けに成っているクルマもあった。電車の屋根の向こうには電車より大きな船がひっくり返っていた。
人々が外に出てきて騒いでいた。クルマの下敷きになっている人も居る。
線路の上で電車が横たわっている姿はあの、神戸の大地震で見て以来だ。そのときも船が線路に上がる事はなかった。
泣き声が聞こえる。亡くなった人も居るのだろうか・・
僕は、神戸の大地震の日、なかなか警察や救急が来なかったことを思い出した。
しかし、何故、大阪湾で津波が起こったのだろう、あの、オレンジ色の光は何だったのだろう・・
僕は由貴に会わなければならない。彼女はどうだったのだろう・・携帯電話を取り出してみた。
ポケットに入っていて、水に完全に浸かったようには見えないけれど、どのボタンを押しても何の反応もない。
線路を歩くことにした。線路の上では電車がまだ何本か横転していた。
どの電車からも乗客たちが外に出て騒いでいる。しばらく進むと住宅が見えた。住宅も壊れているものがたくさんあった。
船が突き刺さっている住宅もあった。
僕は何より由貴の無事な姿が見たかった。
線路を半ば駆け足で歩く。津波の影響は市街地に入ればそれほどでもないようだった。
床下浸水程度で収まっているところもあった。
空はますます暗い。雨が降りそうだ。
鷹取駅が見えてきた。ここでは新快速電車が脱線もせずに停車していた。
「線路を歩かないで下さい・・危ないですから」
停車している電車の運転士らしき人が僕を呼び止めた。
「電車は動かないでしょ。少なくともここから西は・・」
僕の答えに運転士はむっとしたようだった。
「津波で電車が転覆していますよ。須磨駅のあたりで何本か・・」
「嘘を言うな・・」
「本当です。知らないのですか・・」運転士は黙ってしまった。
そのとき、僕の後ろから同じように歩いてやってきた人たちが後ろのほうに見えた。運転士は何も言わずそっちの方向を見るだけだった。

僕は停車中の電車の脇を通り過ぎた。僕を見て、ホームにいるほかの乗客たちも線路に下りて歩き始めた。
空はますます暗く、ついに雨が降り始めた。
すすが混じっているかのような黒い雨だった。雨はすぐに強くなり、土砂降りになってしまった。黒い雨はやがて、普通の雨の色になった。
線路は高架になっていて、付近の町が津波で水浸しになっても、ここだけは関係が無いかのようだ。
このあたりでは水はまだ引かず、まるで湖に家が浮いているかのような景色だった。更に歩くと、新長田駅へ続く坂になる。
線路の枕木の上は歩きにくい。息が苦しくなる。
雨はまだ降っていた。
貨物列車が停車している。機関士がドアをあけて、出入り口に腰掛けている。僕を見ても何も言わなかった。
新長田駅のところにブルーの電車が停まっているのが見えた。
もしかして・・僕はとっさにそう思った。
線路を歩く僕の足が速くなった。もしかしたら、彼女が、由貴がまだここにいるかもしれない。新長田駅のホームが近づいてきた。
ふと、線路の下を見ると、湖のようになった、町の中で水に浮かんでいる人がたくさん見えた。死んでいるのだろうか・・
地下街や地下鉄の駅にいて、あの津波を受けた人たちだろうか・・ヘリコプターが飛んでいる。ジェット戦闘機も飛んでいる。
津波からすでに1時間が経とうとしている。
そろそろ何らかの救援部隊が来てもいいころだ。それにしても警察は何をしているのだろう。パトカーのサイレンも聞こえない。
新長田駅に入りかけたところに青い普通電車が停車していた。
ホームには人が溢れている。
僕はホームに上がり、人ごみを掻き分けて前のほうへ進んだ。由貴・・生きていてくれ!そう願いながら・・
ホームの前のほうへくると人々はホームの先に集まっていた。
ここからは結構遠くまで見渡せる。いつしか雨が上がっていた。
「シンジ!」
由貴だ!僕は声のほうへ走った。由貴がそこに立っていた。
「無事でよかった!」僕は彼女を抱きしめた。

東の方向は真っ暗である程度から向こうは何も見えなかった。
僕たちは手をつないで、東の方向を見ていた。
灰色の雲に覆われた空には何機ものヘリコプターが飛んでいる。ジェット戦闘機も上空を行き来している。
何があったのだろう・・
寒くなってきた。
由貴が僕の手を握る力が強くなってきた。彼女も怖いのだ。
ホームにいる人々も、不安のまなざしを空に向けている。
赤ん坊の泣き声がする。
そのとき、明らかにミサイルか何かのようなものが北の方向から、東の、三宮のあたりへ尾を引いて落ちるのが見えた。
オレンジ色の光があたりを包み込む。
風が強く吹いてきた。

**********

20XX年、秋、東アジアにあって、独裁を続けていたJ国に痺れを切らしたB国は核を飛ばした。
正確に首都を狙ったが、状況を察知していたJ国の指導者達はR国との国境付近に逃げて無事だった。
報復はB国にではなく、同盟関係で、かつ、直接国境を接していないこの国に対する核ミサイル攻撃で行なわれた。
核ミサイルは3発発射され、最初の1発は大阪に、2発めが神戸に、そして3発目は若狭湾に着弾した。
東京を狙わなかったのは交渉を有利にするため、この国の首脳を生きさせるためだった。
全面核戦争の危機だったが、なぜかB国はJ国と国境を接するT国、大国のR国、C国との間でこれ以上の攻撃はお互いに不要との取り決めを作っていた。全面核戦争は回避されたが、関西とJ国の首都を中心に500万人以上のの死者を出し、、今後数十年はその場に立ち入れない広大な放射能汚染が、永く人類を苦しめることになった。
日本は関西一帯を消失させられ、東側をR国、西側をB国、南部をC国が統治する事になった。
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