無料レンタル FC2 Blog Ranking story(小さな物語) 2016年03月

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kou1960

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幸せの黄色い電車

吉井川115系

列車に乗る前に駅ビルの食堂で酒を飲んだ
そのゆえか、眠くて仕方がないのは確かだった



・・・素直になれよ
「なってるわ」
・・・なってないよ
「私はいつも素直よ」
・・・じゃ、なんで俺の言葉を受け止められないんだ
「嫌なの、ね、わかって」
・・・そんなはずはない、あのときだってお前は
「あのとき?それはどのときなのよ」
・・・何度も抱き合ったじゃないか、そのときだ
「そりゃ、性的な歓びはあるわよ、でも、それがすべてじゃない」
・・・そんなはずはないんだ
「いい加減、目を覚ましてよ、あなたは片思いだったの」
・・・ちがう
「違わない、私はあなたと人生を行きたくない」
・・・じゃ、誰となら生きていけるんだ
「まだ誰かは決めてない、誰に決めようと私の自由」
・・・きっと、あいつなんだろ!
「だから今はだれとは決めてないって!」
・・・嘘だ
「いい加減にしてよ!」



ハッと気が付いた
列車の座席に身をゆだねたまま
眠っていた
なにか、叫ばなかっただろうか
幸い、隣の座席は空いているけれど
ほかの座席にはもちろんほかの乗客がいる



だれも私のほうを見ていない
きっと私は叫ばなかったのだろう
嫌な夢だ
もう、二度と思い出したくない男の情けない姿だわ



窓の外を見る
列車は春の柔らかい光の中を快走している



・・・由美ちゃん
「ん、健太やん」
・・・久しぶりやな
「ほんまや、めっちゃ、ひさしぶりやん」
・・・元気そうで何よりや
「うん、健太は?」
・・・わしなぁ・・
「うん?」
・・・もう、この世におらへんのや
「え・・死んだん?」
・・・知っとるやろ
「え・・ぜんぜん知らへんし、なんで?」
・・・お葬式に来てくれたやん
「そうやったかなぁ」
・・・由美ちゃんな
「うん?なに?」
・・・もうすぐ、ええことあるで
「そうかなぁ、なんもええことないんやけどね」
・・・もうすぐや、もうすぐ
「そうかなぁ」



また眠っていたよう
景色を楽しみに乗った列車で景色を眺めないなんて
ちょっと自分がおかしくなる
さっき呑んだお酒のゆえかな



それにしても、そうよね・・健太、死んだよね
小学校6年生の夏、クルマに轢かれて・・・
お葬式にも行ったわ



ワタシ、健太が生きていたら
健太と結婚したと思う
健太、初めてキスをしたよね・・
お互い下手で・・何がいいのか分からなかったけれど
小学生の恋ってああいうものだろうね、きっと



それからすぐだったね・・あなたが逝ったの



変な男ばかり捕まえて
変な恋愛ばかりしたわ
気が付けばワタシももう三十路か
お嫁の貰い手がないってこのことよねきっと



言い寄ってくるのは、この女は自分のものだと言いたげな顔をした
ごろつきばかり・・



そやけど健太
列車の中の私にわざわざ「ええことあるで」って
どういうことやろうね
ほんとうに「ええこと」あってほしい
健太と結婚したかったな
いい家庭になっただろうな
健太、どこにいるの?
あの世?
それはどこ?
会えないのかな?



悲しくなってきた
私は泣き上戸だった・・これを抑えるにはさらに酒がいる
降りようか・・
このごろのJR特急は車内販売はないし、急ぐ旅でもない
予約しているシティホテルに夕方までに入るには時間の余裕もあるし
ちょっと降りて、駅の中ででも酒を飲んでみよう



嫌だなぁ・・
「独身女性」であるはずの私が、酒を飲むために列車を降りるって
いつからだろう、こんなに可愛くない女になったの
少なくとも、健太とキスをしたころは可愛い女の子だったはずよ



降りたのだけど、駅近くに昼間からお酒を飲めるお店なんてないって
「ちょっとお酒を飲める店ありますか?」
そんなことを駅員に聞いたら怪訝な顔をして
「ここは田舎ですから」って苦笑してたけれど
ちょっといい男だったわね
あなたでもいいよ、私の相手・・
って、そんなわけにもいかないよね



おまけに降りてしまったら次の特急は1時間後、鈍行なら20分ほどであるっていうけど
仕方ないから鈍行で行くわ
急ぐ旅ではない・・けどね
お酒は駅前の自販機でみつけただけ
これも仕方ないからそれを買ってきたの



なに、真っ黄色の電車!
「幸せの黄色いハンカチ」って、映画あったね
じゃ、この電車は「幸せの黄色い電車」って
何か幸せが探せるかな



空いているし、鈍行なのに座席は前向きの座席だし
お酒を飲むにはちょうどいいわ
駅前で見つけた缶ビール、好きな銘柄じゃない
これまた仕方ない・・
仕方ないが三つ続いたから、今度は仕方あるにならないかな
仕方ある、仕方ある・・
それって、運命?必然性?



「あの、そこ、宜しいですか?」
「あ・・はい」
私は窓にところに並んでいる空き缶をちょっと恥ずかしく思いながら
自分の横の荷物を膝の上に置き、件の男性の席をあけた
いつの間にか、列車は混んでいた
「お酒を飲みながらの旅ですか?いいですね!」
「あ・・はい、とても楽しいですよ」
そういい、その男性と顔を見合わせて笑った
彼も手に焼酎のカップを持っていた
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